~~
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が来日し、日本とNATOが安全保障面で連携を強めていくことになった。高く評価したい。
ストルテンベルグ氏は岸田文雄首相、林芳正外相とそれぞれ会談した。ロシアのウクライナ侵略を非難し、中国とロシアが日本周辺で共同訓練を行うなど軍事連携を増大させていることへの懸念を共有した。
岸田首相は新しい国家安全保障戦略について説明し、ストルテンベルグ氏は支持を表明した。
共同声明では、ロシアのウクライナ侵略やインド太平洋地域におけるパワーバランスの急速な変化を踏まえ、力による一方的な現状変更は世界のいかなる場所でも認められないと強調した。
ストルテンベルグ氏は共同記者発表で、日本が中国の動向を非常に懸念していることについて「NATOはその通りだと思っている」と語った。さらに「中国は、核兵器を含む軍事力を大幅に増強し、近隣諸国を威圧し、台湾を脅かしている。基幹インフラをコントロールしようとしている」と明言した。対中認識が一致できた意義は大きい。
共同声明では、インド太平洋地域と欧州の安全保障が密接に関連しているとし、「信頼できる必然のパートナー」として、日本とNATOの協力強化を確認した。
共同記者発表でストルテンベルグ氏は「プーチン(露大統領)がウクライナで勝てば、全体主義の国が軍事力で勝てるというメッセージになりかねない。中国などの将来の決断に影響しかねない。欧州で起きていることが東アジアで明日、起こりかねない」と述べ、日本のウクライナ支援に謝意を表した。ストルテンベルグ氏の指摘は正しい。
日本では、森喜朗元首相が1月25日、「こんなにウクライナに力を入れてしまってよいのか。ロシアが負けることは、まず考えられない」と述べ、岸田政権のウクライナ支援に疑問を呈した。
このような考えは日本でごく少数だが、ウクライナ問題への対応が日本の安全保障の根幹につながっている点を踏まえないもので同意できない。ロシアの侵略は明白な国連憲章違反で、ロシア軍は戦争犯罪を重ねている。日本はNATOと協力して専制主義の中露両国を抑止していくべきだ。
◇
2023年2月3日付産経新聞【主張】を転載しています